こんにちは。
とあるメーカーで海外営業に携わって20年超の神高(かんだか)です。
44歳で英検1級に受かった後、TOEIC は900点前後でウロウロしています。
入社6年目の営業部)高橋くんから TOEIC(トーイック、トエック)で時間が足りないのでコツを教えて欲しい、との質問がありました。
カンダカさん、TOEIC にコツなんてありますか?
点数が簡単に増えるゲームの裏技、攻略法みたいなものなんですけど(笑)
スコアを簡単に伸ばす方法があるとしたら、TOEIC 全体のイメージを持つことだろうね。特に「問題の構成」と「心理の変化」は大切だ。
(以降、神高(かんだか))
「先読み」や「引っかけ問題」など、個々の問題の仕掛けや解き方が気になるから「コツ」という表現になるのはわかる。
時間切れになるように、問題が構成されているからね。
でも、TOEIC 攻略のコツ、時間が足りない事への打開策があるとすれば、試験全体のイメージ、特に「問題構成」と「心理の変化」への理解なんだ。
この二つを意識するするだけで、400点台の高橋くんなら50点、あるいはもっと上がるかも知れない。
特に、時間切れで最後の20問前後を全部同じ文字で塗っている、なんて状態ならね。
前半で「問題構成」、後半で「心理の変化」について説明しよう。
- 「問題構成」のコツ: パート2の25問に力を注ぐこと
- 「心理の変化」のコツ:パート3から素直さを取り戻すこと
実際の問題を使いながら、「問題構成」から一緒に確認していけば、ぼくが伝えたいことをわかってもらえると思うから、活用してみよう。
TOEIC を日本で運営する IIBC のサイトでは TOEIC 全体の構成が紹介されている。
実際の試験に出されそうな例題が並んでいるだろう?
まずは、7つあるパートの問題数と出題パターンを頭の中でイメージできるようにしてほしい。
【真相】TOEIC(トーイック)で時間が足りない?|問題の構成に隠された心理の変化とは
TOEIC を受験したことがあるから、わかるよね。
公開テストにしても、あるいは社内で受ける TOEIC IP(団体用試験)にしても、最初は Part 1 の「写真のリスニング問題」から始まる。
で、あの写真の問題、全部で何問あるか、憶えてるかな?
正解は「6問」。
昔は10問、さらにさかのぼると20問なんて時代もあったんだけど、だんだん減らされていまやたったの6問だ。
だから、リスニングセクションは全部で100問だから、TOEIC 対策を本格的に始めようとする人は Part 1 の準備は後回しでいい。
リーディングも含めたTOEIC 200問中、最も得点を左右して、しかも伸びる可能性が高いのが次の Part 2 だ。
最初に注目すべき「問題構成」のポイントは、 Part 2 の位置づけだろうね。
Part 2(リスニング)の「応答問題 25問」対策を最優先する理由
IIBC の公式サイトには Part 2 の解説がある。
1つの質問または文章とそれに対する3つの答えがそれぞれ1度だけ放送される。印刷はされていない。設問に対して最もふさわしい答えを選び解答用紙にマークする。
引用:IIBC – テスト問題の構成(https://www.iibc-global.org/toeic/test/lr/about/format.html)
実際に出題されるレベル、クオリティの例題も用意してくれているので、一緒にみてみみよう。
Part 2 の例題( No. 7 )で紹介されているのは、「どこに置いたの、新しいファックス?」と質問されて、ABCの順に答えるタイプだね。
日本語でやりとりすると、こんな感じだ。
- 質問)どこに置いたの、新しいファックス?
- (A) 水飲み場の近くだよ
- (B) ファックスは明日、送るよ
- (C) 水曜日までにはね
水飲み場( water fountain )という表現の登場で一瞬、「え?デスクの横とかじゃないの?」ってなるけれど、(B)(C)ともアサッテの答えをしているから (A) が正解。
海外出張などの目安とされる600点台が目標なら、この手の問題が10問出されたら7問以上は正解できるようにしたいね。
さて、この Part 2 の対策を最優先するべき理由は3つある。
- 選択肢がABCの3つと少ない(他は全部ABCDの4択)
- 100問中25問とリスニング全体に占める問題数が多い
- 英語を聴く機会の少なかった人でも成果を出しやすい
理由①:選択肢がABCの3つと少ない(他は全部ABCDの4択)
ぼくが初めて TOEIC を受けた1990年代からそうなんだけど、伝統的にずっと Part 2 だけは ABC の「3択」なんだ。
だから、25問全部 A を選んだとしても、1/3 x 25 = 8.333 = 8問から9問は正解になる。
リアルに想像したら、このやり取りは日本語でも難しいでしょう?
廊下で会社の同僚とすれ違うとき、いきなり「どこに置いたの、新しいファックス?」って聞かれたら、前半の「どこに置いたの」の部分を聞き逃す可能性が高い。
後半の「・・・新しいファックス」は聞き取れたとしてもね。
この問題なら、最初の「 where 」「 when 」「 why 」などを聴きとれたかどうかが試されているのと一緒だけど、選択肢が読まれるたびに「あれ? where と聞こえたけど、聴き間違いかな?」と疑心暗鬼が生まれる。
そのような意図で、TOEIC の出題者は「ファックスは明日、送るよ」「水曜日までにはね」という「ひっかけ」の選択肢を二つ、用意しているんだ。
ちなみに、なぜ part 2 だけ3択なのか。
真相はわからないけど、4択にすると最初の質問が頭から抜ける人が増えて、難しくなりすぎるから、かも知れないね。
答案用紙に「質問を予想できるような情報」が何も書かれておらず、いきなり音だけで質問をしてくるわけだから、4択となると相当、難しい。
そこまでしなくても、解答はばらけるのだろう。
理由②:100問中25問とリスニングパート全体に占める問題数が多い
100問中25問とリスニングパート全体に占める問題数が多い。
これも、大切なポイントだ。
リスニングセクションは後半の「長い会話(パート3:39問)」「長い話(パート4:30問)」のインパクト(難しさへの衝撃)が強すぎて忘れがちだけど、Part 2は25問もある。
一般的に海外出張の目安となる600点台を狙おうと思えば、Part 2 こそ草刈り場(得点源)となるステージなんだ。
理由③:英語を聴く機会の少なかった人でも成果を出しやすい
英語を聴く機会の少なかった人でも成果を出しやすい。
これが最後の理由だ。
実際、会社員、社会人になって TOEIC 対策をした人は、リーディングよりもリスニングのスコアが伸びる人が多い印象がある。
おそらくそれは、就職してから英語を聴く機会(時間)を意識して増やしたからだろうね。
正直言って、用事も目的もないのに英語を聴き続ける、なんてできることじゃない。
「好きに理由なんて要らない」なんてノリで、短期間でも英語学習そのものを楽しんできた人は別だよ。
でも、ぼくも含めて、多くの人は学生時代に英語のリスニングの学習、訓練にほとんど時間を割けなかったはずだ。
だからこそ、仕事をしながらでも、毎日少しずつでも学習時間を取れる人はリスニングから伸びる。
ゼロとイチの差は大きいからね。
TOEIC の各パートに隠された「心理の変化」とは?
次に「心理の変化」の説明をしよう。
実は、「心理の変化」の視点でも Part 2 は重要なターニングポイントだ。
というのも、「疑い」と「素直」が揺れ動くパートだからだ。
何度か TOEIC を受けた人は、なんとなく次のような意識がないかな?
- 問題文と同じ単語が選択肢に出てきたら、引っかけ問題かも
- 似たような音の選択肢があったら、どちらかは不正解じゃないか
公式問題集を使いながら練習するとわかるんだけど、たしかに part 1 と part 2 には勘違いをさそう「ワナ」がたくさん仕掛けられている。
いや、ワナだらけと言っていい(笑)。
そして、その多くは「同じ音」「似た音」を使っている。
さっきの例題でいえば、選択肢 (B) に含まれている「ファックスは明日、送るよ」の部分だね。
だから、part 1、part 2 は「疑い」と「素直」を 9:1 くらいの割合で意識しながら解くくらいでちょうど良いんだ。
同じ音、似た音が出てきたら、他の選択肢が正解じゃないか、っていう「疑いの目」は正答率を上げてくれる。
でも、この「疑い」の気持ち MAX のまま part 3(長い会話)、part 4(長い話) に進むと、逆にワナにかかっちゃう。
part 3 と part 4 は、問題こそ長いけれど選択肢に part 1 や part 2 の「底意地の悪さ」がない。
しかも、疑っていたら時間が足りなくなるようにできている。
part 3 や part 4 の場合、いかにもホテルの受付で行われている会話は「おそらく」ホテルのロビーだし、「診察の予約を変更したいんですけど」と電話をかけてきた主は「たいてい」患者だ。
これらを
- 「いやいや、最後で『ここは、カフェでした!』なんて、どんでん返しがあるかも」
- 「患者っぽいけど、実は医療機器を売る業者じゃないか?」
なんて「疑いの目(耳)」は正直、解答をする邪魔になる。
だから、part 2 が終わったら「素直」さを取り戻すのが「心理の変化」までも考えに含んだ「TOEIC のコツ」だ。
ふたたび、IIBC で紹介されている part 3 の例題を見て欲しい。
Part 2 の「気持ち」のまま、Part 3 を解いてはいけない
IIBC のサイトで紹介されている Part 3 の例題( No. 32, 33, 34 )を解いてみよう。
実際に、解説を読む「前」に、一度、自力で解くと、わかる。
part 3 の問題は、二人(3人のこともある)の会話がどこで行われているかをつかむのが最初の「ターゲット」だ。
そして、大抵の場合、会話の最初の方にヒントがいくつか入っている。
今回の例題であれば「もしもし、おたくのウェブサイトで買ったコーヒーマシンについて電話してるんですけど」みたいな会話で始まる。
ここは、疑いを向けずに「素直に」受け取るといい。
疑ってしまうと、情景が頭に浮かびにくい。
そして、多くの場合「会話の順番通りに」解答のヒントが示される。
- 女性はなぜ、電話をしたのか
- 男性は何を質問したのか
- 男性は何を提案したのか
男性が質問をしたのは会話の中盤、男性が逆提案をしたのは終盤だ。
試験本番であれば、音を聴きながら順々にマークをする。
疑って引き返していたら、時間切れで次の3問はまともに解けない。
【真相】TOEIC(トーイック)で時間が足りない?|問題の構成に隠された心理の変化とは|まとめ
ここまでの内容をまとめておこう。
「試験対策をするなら part 2 から取り組もう」という意見は目にしたことがあるかも知れない。
でも、試験中の心理の変化(「疑い」と「素直」)については、あまり他では見聞きしたことはないと思う。
そりゃ、そうだろう。
TOEIC 対策について質問を受けたとき、ぼくが勝手に提唱している「仮説」だから(笑)。
とはいえ、テストを受けている間に起きる「心理の変化」は、「テスト全体の時間管理」という意味でとても大切な視点だ。
一見、シンプルそうにみえる TOEIC を難しいテストにしている要因の一つでもあるからね。
part 1 は、ビジュアル(写真)で答えやすそうにふるまっておいて、じつは不自然な言い換えや受動態を多用している。
だから、すべての選択肢を疑ってかからないといけない。
part 2 も、先に解説した通り「疑い」の気持ちを保ったまま、正誤を判断していく。
つまり、part 1、part 2 とも「消去法」の視点が必要だ。
「間違いの選択肢」にも、「選ばなかった理由」が欲しい。
ほぼ全ての選択肢が「勘違いを誘発する狙い」を持って作られているからね。
個々の問題が短いだけに、選択肢の中に「高度な引っかけ」が用意されている。
でも、part 3 から先は違う。
part 3 先の問題まで、そんな「疑いの目 MAX 」で選択肢を読んでいたら、とても時間が足りない。
また、出題する側も引っかけの度合い(味付け)をかなり弱めている。
だから、リーディングパートも含めて、part 3 から先は「間違いと判断した理由」を試験中に探してはダメなんだ。
パート3に入ったら、過去を振り返っている時間はない。
英語力はそのままで「 TOEIC で高得点を取るコツ」があるとすれば、この事実に早く気づくことだろうね。
今まで時間切れで得点が伸びてない自覚があるのであれば、この意識だけで50点は変わってくるだろう。