こんにちは。
とあるメーカーで海外営業に携わって20年超の神高(かんだか)です。
44歳で英検1級を取ったものの、TOEIC は900点とちょっとでウロウロしています。
入社6年目の営業部)高橋くんから TOEIC IP について質問がありました。

カンダカさん、社内で受ける TOEIC IP と 普通の TOEIC って何か違いがあるんですか?

普通の TOEIC って、公開テストのことだよね。
問題は共通なんだけど、「位置づけ」はけっこう違うよ。
(以降、神高(かんだか))
ということで、今回は「 TOEIC(トエック、トーイック)」の公開テストと TOEIC IP (トエック・アイピー)の違いについて説明しよう。
TOEIC IP と TOEIC 公開テストの違いってあるの?|あるとしたら何?

TOEIC IP テストも TOEIC 公開テストも、同じ IIBC (一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会 ( The Institute for International Business Communication ) が開催している「英語の資格試験」だ。
だから、IP テストは違う段階が許可やライセンスを受けてやっている「模擬試験」「オープン模試」ではない。
そして、TOEIC IP TESTは「団体特別受験制度(IP:Institutional Program)」という制度で、原則は10名以上で申し込むことが条件となっている。
つまり、大学や会社の中で受ける TOEIC が「 TOEIC IP 」なんだ。
ちなみに「 Institutional (インスティテューショナル)」という英単語は協会、学会、公共団体の、という意味で、institutional investor (機関投資家)なんて使い方をされる。
一方、「公開テスト」は個人で申し込み、大学や専門学校などの「公開会場」で試験を受けることになる。
ここからは、公開テストと TOEIC IP の違い、そして同じところを説明していこう。
TOEIC IP と TOEIC 公開テストで問題の構成や試験時間に違いはない
まずは共通点を挙げてみよう。
TOEIC IP と TOEIC 公開テストで問題の構成や試験時間に違いはない。
いずれも、リスニング100問(約45分)、リーディング100問(75分)の2時間で行う試験で、難易度に差はない。
各495点でスコアは計測されて、満点は990点。
TOEIC IP はどこか(日本とは限らないらしい)で行われた公開テストの問題を再利用していると言われている。
じゃあ、何回も受けると同じ問題が出てくるからスコアも高く出るのか、といえばそんなことはない。
もちろん、年に何回も受けていると「あれ、この問題、見たことあるな」という設問に出会うこともあるよ。
実際、ぼくにも経験がある。
特にリーディングセクションの最後、チラシや掲示板などでデジャヴ(既視感)がある問題に出会うことがたまにある。
でも、あれはデジャヴなんかじゃなくて、本当に過去に解いた出題なんだろうね。
とはいえ、見たことがある問題だからといって、自信を持って正答を選べるかといえば、そんなことはない。
進研ゼミのマンガじゃないけど、見たことがある、くらいではスラスラ解けない。
TOEIC の場合、一問にかけられる時間が非常に短い上に、問題数も半端なく多い。
再会を懐かしがっている暇はないんだ。
TOEIC は IP も含めて問題の持ち帰りを許していないから、結果として公開テストも TOEIC IP も同じようなスコア(点数)に落ち着く。
TOEIC IP では顔写真入りの「公式認定証」が発行されない
TOEIC IP では顔写真入りの「公式認定証」が発行されない。
これは「公開テスト」と「団体テスト( TOEIC IP )」の大きな違いだね。
ぼくが初めて TOEIC を受けた1990年頃は、記憶するかぎり、顔写真入りの「公式認定証」なんてなかった。
しかし、TOEIC の社会的な評価が高まって、就職や転職、昇進の目安として用いられるようになると、本人確認が必要な時代が到来。
途中から身分証明書による本人確認と写真の添付が必須になったんだ。
それ以降は写真付きの「公式認定証」を発行できるようになった。
ぼくが会社員になった1999年頃はまだ、写真付きの Official Score Certificate ではなかったように記憶してる。

トエックの歴史に詳しい人に聞くと、第88回公開テスト(2001年11月25日)から公式認定証に顔写真が載るようになったようだね。
元々ただの民間試験とはいえ、社会的な評価が上がってくると悪いことを考える輩も出てくる。
不正受験が社会問題になるとダメージも大きいから、IIBC(当時は、TOEIC 運営委員会かな?)しっかり手を打ったのだろう。
TOEIC IP のスコアを公開テストと同じとみなすかどうかは受け取る団体次第
TOEIC IP のスコアを公開テストと同じとみなすかどうかは受け取る団体次第。
TOEIC を管理、運営している IIBC も公式サイトで認めている内容だ。
TOEIC L&R公開テスト、TOEIC L&R IPテストおよびTOEIC L&R IPテスト(オンライン)のテスト結果(スコア)の意味は同じです。ただし、TOEIC L&R IPテストは、当協会の管理下で実施・運営する公開テストと異なり、テスト実施の進行・管理を実施団体に委ねている点から、Official Score Certificate(公式認定証)は発行されません。
ー引用:TOEIC Listening & Reading IPテスト(オンライン)の解説から
そして、進学や就職に利用できますか?という質問については、以下のように答えている。
提出先独自の規定を設けている場合があるため、スコアを活用する際には提出先へご確認ください。
TOEICer(トエッカー、トーイッカー)は IP の価値を認めていない
ちなみに、高橋くんは TOEIC 自体を「ゲーム」として楽しめるかい?
もし可能なら、TOEICer(トエッカー、トーイッカ―)と呼ばれる人種になれるかも知れない。
彼ら、彼女らは、TOEIC 自体をゲーム感覚で楽しんでいて、公開テストを毎回(毎回、だよ)受験して、Twitter(ツイッター) などの SNS に結果をアップするんだ。
しかも、そのうち何人もが「満点(990点)」を「連続○○回」取った、といったことをテスト結果画像付きでツイートする。
ただ、TOEICer の人々は、どうやら TOEIC IP の結果は認めていないようなんだ。
公開テストは、いわゆる「新作」として扱われるから楽しめるけど、 TOEIC IP は過去に使われた問題で構成されているし、受験会場の条件も違う、ということでね。
まあ、ぼくも受験歴だけは20年超と長いから、TOEIC をピュアに楽しむ気持ちも理解できる。
そんな時期が、ぼくにもありました(笑)。
たった数ヶ月でも、英語に惚れぬいた時期があると、のちのち役に立つからね。
結果として、英語が本当に好きになって、留学や外資系への就職・転職など、夢をかなえる人もいる。
短期間であっても「試験を試験として楽しめる」のならメリットは大きい。
TOEIC IP と TOEIC 公開テストの違いってあるの?|まとめ

ここまでの内容を目次形式でまとめておこう。
TOEIC の公開テストと TOEIC IP(団体受験)、会社員として社内向けに英語力をアピールする目的なら、全く差がないことは分かってもらえたかな。
もちろん、 TOEIC を含めた英語の指導者、教育者になりたい人や、公開テストをゲーム感覚で受けられる人、趣味にしている人は TOEIC IP では目的に合わない。
インターネット、あるいは書店などで公開テストに申し込もう。
ちなみに、TOEIC IP 限定で、TOEIC Listening & Reading IPテスト(オンライン)という方式が2020年から始まった。
実際に職場が用意してくれたので、ぼく自身も受験の機会があった。
パソコンを使うんだけど、さらに CAT(Computer Adaptive Test)という仕組み( AI みたいなもの)を使って、試験時間を約1時間に圧縮(短縮)してスコアを測ることができるんだ。
もちろん、問題数も半減するんだよ。
しかも、スコアの意味合いはこれまでと同じく 990点満点、200問の従来型に近い点数が出るそうだ。
いつかはわからないけれど、TOEFL がオンライン化した流れに従うなら、TOEIC もそうなっていくとは思う。
大学の教室など、どでかい会場に人をたくさん集めて、マークシートで採点。
試験結果が出るのは1ヶ月後、なんてテストは前時代的だし、実は主催者側(試験をする側)もコストでメリットがあるから、オンライン化を進めたいはずだ。
ただし、受験者数が減らないのであれば、だけど。
これまで公開テストを楽しみながら受けていた人々( TOEICers )は、オンライン化となると戸惑うし、寂しい気持ちになるだろう。
一部の人は試験自体を受けなくなるかも知れない。
だって、「ハーフマラソンのタイムをフルマラソンに換算したものを公式タイムとしてお渡ししますよ」なんて言われてるようなものだからね。
ぼくも、趣味の感覚で英語の試験を受けていた時期があるからよくわかる。
TOEICer の方々は、そんな修正されたスコアが欲しいわけじゃない。
そしておそらく、IIBC は公開試験は今の形式を公開テストでは維持するだろう。
だから、オンライン版の TOEIC は、会社員、特にリモートワークや出張、海外駐在がある人の英語力の確認に、まずは使われていくんじゃないかな。
TOEIC Listening & Reading IPテスト(オンライン)パソコンがないと受けられないから、公開会場に受験生を集めてパソコンを並べて行う、というわけにもいかないだろう。