こんにちは。
とあるメーカーで海外営業に関わって20年超の神高(かんだか)です。
先日、こんなツイートをしました。
茂木健一郎さんは、TOEIC に恨みでもあるのか(笑)、「消えて欲しい」とまでおっしゃいます。
一方の「もりてつ」さんは TOEIC 満点を何回も達成している講師 & Youtuber ですから、試験の有意義性を主張することになります。
とはいえ、メーカーに勤める会社員として、日常的に英語を使う立場からすれば、いずれもこのペーパーテストに対するポジションが極端なんですよ。
TOEIC の意義って、別のところにあると感じていますから。
【疑問】茂木健一郎さんは TOEIC に消えろ、とおっしゃるが……|点数だけではない意義とは?

TOEIC にチャレンジすることの意義って、見る立場によってずいぶんと違います。
ぼく自身は「 TOEIC の運営( IIBC )による再三の値上げは気に入らないけど、意義はあるよ」という見解です。
今回は、海外との仕事に関わる一人の会社員として、TOEIC が有意義な理由を3つ、お伝えします。
正直、TOEIC に出てくる単語、表現は商社やメーカーの仕事ではよく通じる|その①
正直、TOEIC に出てくる単語、表現は商社やメーカーの仕事ではよく通じる。
これが TOEIC の一つ目の意義です。
商社やメーカーで海外を相手にしている部署(営業や調達、あるいは海外拠点を管理する部門など)は仕事で日常的に英語を使います。
その時、TOEIC で使われている英単語や表現は、正直、意味がよく伝わります。
そりゃそうです。
もともと、TOEIC の試験の目的やレベル感はそこにあるのですから。
TOEIC は知識を問われない。
その方針は徹底されていて、TOEIC は試験問題で文学とか哲学とか、あるいは英語圏の常識や慣習などを問う問題は絶対に出ません。
しかし、逆に「どうすれば通じやすいのか」「どのような言葉や表現が使われるのか」という視点の問題は、本当に「ワンパターン」といえるほどに繰り返し出題されます。
だからこそ、到達度を計るテストとして有益だとも言えるわけです。
リスニングパート2の軽くて短い文章のキャッチボールが会話の基本となる|その②
リスニングパート2の軽くて短い文章のキャッチボールが会話の基本となる。
これが二番目の理由です。
この30年ほど、TOEIC は何度かリニューアルを見てきましたが、基本的にパート2は「誰かが発言し、それにふさわしい返事を3つの選択肢から選ぶ」というスタイルは変わっていません。
そして、この問題に対応できるかどうかが、会話のやりとりの基礎となります。
たとえば「新しいファックスは何処に置いたの?」と発言が最初にあり、
- 冷水器の横です。
- 明日、ファックスを送ります。
- 木曜日までです。
から正しい答えを選ぶ、といいう形式です。
この問題、いくら解いても茂木さんの言われるような知識とか文化とかとは無縁です。
単なる短いフレーズによる情報交換、意思疎通ですから。
しかし、シンプルな会話のパターンをいくつか知っておくことで、いわゆる会社員にとって仕事で使える英語力は身に付きます。
「仕事で使える英語」といっても、細かくしていけば、このくらいまでシンプルになるわけです。
会社員の世界ではスコアが「○○実務経験者」になるチケットになりうる|その③

会社員の世界ではスコアが「○○実務経験者」になるチケットになりうる。
これが3番目の理由です。
日本の会社は、どうしても「経験者」を求めがちです。
それも当然で、中途採用とはいえ、一度正社員で雇ってしまえば、(形式的に試用期間があるとはいえ)簡単に解雇できないので慎重なのです。
年齢を重ねている人で資格も実務経験もない、という方を採用するのは難しい。
しかし、TOEIC その他の知名度があり、評価の定まっている資格試験は「○○経験者」になる扉を開いてくれます。
特に、第二新卒と呼ばれるような若い頃、あるいは新卒なら、資格試験である程度のレベルに達しているだけで「やる気がある、見込みあり」と人事担当はみなしてくれ易くなります。
なぜなら、実際に活躍している人たちが TOEIC にチャレンジしている比率が高いから。
もちろん、例外もあります。
たとえば、TOEIC のスコアに関係なく、大胆に英語で交渉を行い、話をまとめてくるようなタイプの営業マンとか。
しかし、特例は特例です。特別な能力なんですから。
一般的な会社員は、日々の仕事の中で「仕事に関係しそうな英単語」を増やしたり、「海外の競合他社のカタログ」を読んだりしながら、日々の課題に取り組んでいます。
そして、そのような人は、社内で実施する TOEIC IP のスコアもそれなりに高い。
だから、英語を使った仕事をしたいなら、TOEIC のスコアをある程度、持っておくのが近道です。
「一緒に働けるかどうか」を決めるのは、いわゆる人事部などの「採用担当」と「人材を必要としている部署の責任者」なのですから、その方たちにアピールできるカードを持っておくのは当然でしょう。
【疑問】茂木健一郎さんは TOEIC に消えろ、とおっしゃるが……|まとめ

ここまでの内容をまとめておきます。
いわゆる「ポジショントーク」という面もあるとは思うんですよ。
茂木健一郎さんは教員であり、研究者であり、さらにはタレントやコメンテーター、講演家としての側面もあります。
つまり、自分の考えをアウトプットするのが仕事。
表現者という意味では、漫才師(コメディアン)や小説家などと同じカテゴリーに属します。
となると、何を伝えたいのか、中身(コンテンツ)は何か、を重視する立場は当然です。
一方、TOEIC のスコアをきっかけに
- 「メーカーや商社で働く会社員としての仕事の幅を広げたい」
- 「組織の一員として結果を出して責任を果たしたい」
という、わたしに近い立場の方は、そこ(自分)に重きを置かないでしょう。
なぜなら、「自分」は商品ではなく「扱う商品」自体が商品であり、相手の関心事だからです。
端的にいえば、相手の興味・関心は、商品、サービスの QCD (品質、コスト、納期や配送)にあります。
冷徹にいえば、人に興味はない。
もちろん、会社員の私とて、仕事を少し離れて、仕事の関係者とプライベートな一面をチラッと見せることはあります。
結果として「あなただから仕事をお願いしようと思った」と世辞を言ってもらえることも、まれにある。
しかし、自分自身をコンテンツにするための英語とは違う。
「最後は人柄」「結局は人間力」といっても、組織人であれば程度の問題です。
その意味で、茂木健一郎さんの意見も「まあ、そんなものか」程度で片づけて構いません。
スコアなんて自己満足、承認要求だ。
そうかも知れない。言わせておけばいい。
そう言いたい、言わなきゃならないポジションの人ですから。
でも、TOEIC は世間で有用と認知されているわけだから、TOEIC だって何だって、使えるものは使っていけば良いのです。