こんにちは。
TOEIC(トエック、トーイック)受けて25年超の神高(かんだか)です。
職場の若い同僚から、面白いコメントをもらいました。

TOEIC 専用の単語集「金のフレーズ」に出てくる「 TOEIC の世界では……」って面白いですね。あれ、知っておいた方が得ですか?

ああ、TEX加藤さんの「TOEICの世界にはブラック企業が存在しない」とか、あれね(笑)。出題形式を知る上では役に立つよ。
(以下、神高(かんだか))
TOEIC(トエック、トーイック)は仕事で英語を使えるかどうかを判断する試験として生まれたから、場面設定が仕事場とかホテル、空港や何らかの店舗、というケースが多い。
そして、生じるやり取りには、ある程度の限定されたパターンがあるんだ。
2名、3名の会話がある以上、何らかの「問題」だったり「トラブル」だったりが存在する。
簡単な挨拶だけじゃあ、終わらない。
たとえば、TEX 加藤さんが金のフレーズ(金フレ)の中で述べているのだと、こんなのがある。
- TOEIC の世界には離職率の高いブラック企業は存在しない
- TOEIC の世界では時折新聞記事や広告に信じられないようなミスがあり、訂正記事やおわび文が出される
- TOEICの世界ではフライトやイベントの予約を間際になって変更するケースが多発する
こういった前提を知っておくと、例えばリスニングパートで単語を聞き逃した時、ストーリーの類推が少し楽になるだろうね。
たとえば、TOEIC の中で交わされる会話において、
「今月、○○時間を越えた残業代は出せないんだって…」
なんてセリフはあり得ない。
残業の話をするなら、おそらく「シフトの変更を同僚に依頼する」とか、「上司に提出する資料をいつまで待ってもらえるのか」といった会話になる。
また、空港のカウンターに慌てた様子で現れた人物はおそらく「予定の飛行機に乗り遅れて、次のフライトスケジュールをたずねる」ことになるだろう。
「怪しい奴を見たんだけど……」なんて映画「ダイハード」みたいな会話が始まることはない。
TOEIC の世界には、試験ならではの「閉じられた世界」があるんだ。
今回は、試験対策としても役に立つ「トーイックの世界」の中の住人が持つ3つの特徴について、ぼくの20年を超える受験経験から解説していこう。
社会人の TOEIC 対策は、この世界観に馴染むことで一気に進む。
TOEICの中の世界観を知るとスコアはなぜ伸びるのか?|「トーイックの世界」の中の住人が持つ3つの特徴も解説

TOEIC(トーイック)の中の住民には、どうしても逆らえない特徴が3つある。
TOEIC の世界で起こることは全て「架空のできごと」である|特徴1
TOEIC の世界で起こることは全て「架空のできごと」である。
これが、TOEIC の世界の住人に課せられた制限であり、第一の特徴だ。
たとえば、Google とか Facebook なんて言葉は絶対に使えないし、歴史上のできごととか、実在の人物についても基本的には話題に出されない。
これは、英検や IELTS(アイエルツ、留学用の英語試験)とは大きく異なるところだ。
また、政治問題も出せない。
たとえば、英検1級の二次試験であれば「日本と米国の防衛に関する協力関係は今後も維持するべきか?」なんてディベート(チーム制の討議)のネタになりそうな課題が出されたりもする。
しかし、TOEIC(トエック)であればそんな話題は出ないし、扱われることはこれからも無いだろう。
英検なら自衛隊( = Self-Defence Forces )という表現は憶えておいた方が良いが、TOEIC 対策なら後回しで構わない。
つまり、TOEIC で出題される範囲と他の試験のそれは明らかに違う、ということだ。
非常に短い時間ですぐに理解できないことは話題に出せない|特徴2
非常に短い時間ですぐに理解できないことは話題に出せない。
これが二つ目の特徴であり、制限だ。
TOEIC は2時間で200問もの問題を答えなければならない。
つまり、将棋みたいな長考(ちょうこう)に入ると、とてもじゃないけど時間が足りない。
それは出題する側もわかっているから、深く考えるような問題、謎を解くような問題は出されない。
出されたとしても、簡単な加減乗除で答えられる範囲だ。
これが英検や IELTS ならちょっと事情が異なる。
4つある選択肢のうち、3つが違う理由を考えて消去法で解くような問題も出されるし、そもそもライティング(英文を書く問題)が出されるから、文の構成が出来上がる前に反射神経で答えるわけにはいかない。
TOEIC は時間が足りなくなるように作られているから、そのことを常に意識したほうがいい。
4か国(米国、英国、カナダ、オーストラリア)の人しかいない|特徴3
4か国(米国、英国、カナダ、オーストラリア)の人しかいない。
これが3つ目の特徴であり、TOEIC の制限だ。
仕事で英語を使う、特に製造業や商社に勤めていると、取引の相手がこの4か国に限られる、ということはあまりない。
というより、今はむしろ他国のケースが多いんじゃないかな?
シンガポールに出張したときに面会するのは、会社の母体が欧州や米国であってもインド系、あるいは中華系の人が多い。
東南アジアのホテルや飲食店ではフィリピン系の方が接客に応じてくれるケースが頻繁にある。
また、以前は(深く関わったのは、15年くらい前かな……)あまり英語が得意ではないイメージだったインドネシアの方々も、若者を中心に今はかなり英語が達者な人が増えている印象だ。
つまり、リアルな世界よりは制限のある4か国のメンバーで会話が行われている。
とはいえ、TOEIC で突然、インド系の方とフィリピン系の方が話すリスニングテストなんて出されたら、かなり戸惑うだろうけどね(笑)。
TOEICの中の世界観を知るとスコアはなぜ伸びるのか?|「トーイックの世界」の中の住人が持つ3つの特徴も解説

ここまでの内容を復習しておこう。

なんだか、お腹すきましたね(笑)
TOEIC の世界って、思ったよりも狭い世界を扱っているみたいで、少し気が楽になりました。
(以降、神高(かんだか))
英検(英語検定)や IELTS (アイエルツ、留学用の試験)と比べてみるとわかりやすいんだけど、TOEIC(会社や大学で受ける TOEIC IP 含む)だけに注力していると、気づきにくいだろう。
これらを知っておくと、問題の出題形態を理解しやすくなるだけじゃなく、TOEIC という試験そのものへの「気負い」や「ストレス」を軽減できるんじゃないかな。
冗談というか、笑える話でもあるんだけど、これにはマジメな側面もあってね。
いろいろと TOEIC の世界の住人について触れてきた一方で、伝えておきたいことがある。
それは「 TOEIC の英語表現は、どんな国の人にも仕事上の会話であればよく通じる」という事実だ。
話されている内容こそ「架空」だけれど、仕事の中で起きやすいことが題材になっている。
だから、TOEIC の学習で身につけた「単語」「英語表現」「文法の知識」「発音」などは、スコアがどんなレベルであっても無駄にはならない。
米国、英国、カナダ、オーストラリアはもちろんのこと、ドイツなどの欧州、あるいは中国、韓国を含む東南アジア諸国でも、仕事上の会話であれば本当によく通じると感じるよ。
TOEIC の中で交わされている会話や文法問題に出される例文に面白味、ウィットはないかも知れないけれど、スタンダードな要求に応えてくれる。
ある範囲の商品、製品を扱う製造業や商社のビジネスで行われる会話の多くは、以下のいずれかだろう。
- Quality(品質、クレーム)
- Cost(価格、経費),
- Delivery(輸送や納期、リードタイム)
俗に QCD(キューシーディー)とも呼ばれる3要素だ。
そして、TOEIC もいろいろと見せ方は変えてあるけれど、多くの場合、これらの題材を扱う問題が頻繁に出される。
TOEIC の公式問題集を音読したり、気に入った表現や文章を丸暗記(暗唱)したり、といった勉強は、一見、つまらないように思えても、実はとても効果的だ。
単なる試験である TOEIC に過大な期待をする必要はないけど、「役に立たないかも」なんて不安にならなくていい。
TOEIC L&R 対策を真剣にすれば、仕事で英語を使えるようになる道を前に進んでいることは間違いない。